昨日、母のところへ行って来たのだが。
母は一瞬、私が誰か分からなかったようだ。もちろん、アルツハイマーが進めば自分の子供の顔が分からなくなる、ということはそう珍しくもない。いや、最終的には食べ物を飲み込むという当たり前の行為さえ忘れてしまうのだ。それが認知症というものだ。
しかし、これまで母は一応、私や姉のことは分かっていた(私らぐらいしか会いに来ない、ということもあるけれど)。それが今日は、私が、
「お母さん・・・・・」
と呼びかけても、しばらくの間「はて、誰だっけ」という顔をしていた。
「自分の娘の顔を忘れちゃったの?!」
とショックな心を隠しつつふざけて言ってみせたら、ようやく、
「レックスちゃん? レックスちゃんじゃないよね?」
と・・・・・・(じゃないよねって、一体)。
「いつもと感じが違うから」
確かにいつもは家から直接行くことが多いので、普段着姿だった。今日は寄る所があったため、一応外出着ではあったのだが、それにしても私の顔がついに分からなくなったのか、と。
そしてそれ以上に胸に来たのが、自分の娘の顔を忘れてしまったにもかかわらず、母がその事実に対してショックを受けていなかったことだ。
それは、私の顔を忘れたこと以上に、母の病気が進行した現実を物語っていた。
母は私が持って行ったおはぎを、美味しそうに食べた。
「(おはぎを食べるのは)久しぶりだよ」
と言って喜んでいた。1分前のことも覚えていない母だが、おはぎをずいぶん長い間食べていないことは覚えていたのか。私の食い意地が張っているのは、やはり血筋だ、と改めて思う。
もうあと何回、こうして一緒におはぎを食べられるのかな、おはぎを頬張る母の横顔を見ながら思った。
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