2018年2月19日月曜日

私は霊柩車の出る部屋に寝かされている! by母


久々に介護ネタをば。

 

無事、病院に入院し、骨折の手術も確定し、「やれやれ」と胸をなでおろしたのもつかの間、それが私の地獄(?)の入り口だったのさ(あくまで大袈裟)。

 

当時はまだ介護離職はしていなかったので、朝7時過ぎには家を出て都内の会社まで通い、せっせと事務仕事にいそしんでいた。と、いきなり目の前の電話が鳴る。

「はい、○○株式会社でございます」

「レックスさんですか? △△病院です。  実はお母様が・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 母の入院している病院からである。内容はその都度様々だった。母が包帯をとってしまったとか、パジャマを脱いでしまったとか、ベッドの中で体がぶれて危ないとか、要は、

「体を拘束させていただいてよろしいですか?」

 という了解取りなのだった。こちらとしては、母には可哀そうだが、やはり安全と母の自由を選べと言われたら、当然「安全」を選ぶ。

 

そんなわけで、仕事をしていてもあれこれ病院から連絡があり、気が休まる暇がなかった。電話が鳴る度に胸がドキドキする。

 

残業で遅くなるのを何とかやりくりして、会社の帰りに病院を訪れる。満床であるところを頼み込み、やっとの思いで個室に入院させてもらったにもかかわらず、母は、

「私の部屋から霊柩車が出て行った。霊柩車の出る部屋に寝かされている・・・・」

 などと、おかしなことを言いだす。それにしても、霊柩車って、そりゃーあんまりだぜ、母ちゃん・・・・・。あの差額ベッド代はいったい何なのさ・・・・・。

 

思えば、すでに痴呆症の症状が現れていたのだろう。しかし、当時はまだ母が痴呆症だということは分かっていなかったし、骨折の手術とその後のケアの方が差し迫った問題だった。次から次へと現れる症状に、こちらの方は、

「一体どうしちまったんだー!?」

 と頭を抱えてしまった。

 

高齢者が病院に入院したりすると、「せん妄」と呼ばれる妄想状態が現れることがある。これは一過性のもので、退院して元の生活に戻るとたいていの場合、収まる。しかし、このせん妄と痴呆の症状の違いは、素人には中々分からない。私も、母が入院中に一度、物忘れ外来のクリニックに電話して、母の症状を話し、痴呆かそれとも否かのアドヴァイスをもらおうとした。しかし、その答えは、

「受診していただかないと、何もお答えできません」

 であった。確かに、医療の側としてはそれが妥当な答えなのだろうと思う。それに、医者だって忙しいのだ、点数にもならない相談を一々受けていては、身体がいくつあっても足らない、というのが正直なところだろう。

 

が、やはり家族としては、本人抜きでも相談の出来る機関、窓口があれば、と思う。この時の私のように、本人を連れ出せない状況のものもいるし、本人が頑として受診を拒む、という例も多々ある。そんな時、家族は状況を話してアドヴァイスをもらえるところがあるだけでも、精神的にずいぶん助かるのだ。

 

そんなこんなで、母の入院中も何かと心の安らぐ時はなかったのである。だが、本当の修羅場はその後だった。      

0 件のコメント:

コメントを投稿