「おばさんでも雇ってくれそう」&「管理人より仕事が簡単そう」という安易な考えでマンションコンシェルジュの求人に飛びついたレックス、返信メールを見て、
「ゲゲッ!?」
とうなってしまった。と言うのも・・・・・・。
さて、私の住んでいる場所は、「地方都市」という名のプチ田舎orプチ都会(どちらとも言えるってことね)の片隅である。関東の、一応平野部ではあるが、お世辞にも「都心までラクラク通勤!」とは呼べない場所、と言っていい。
私が見つけたマンションコンシェルジュの勤務地は、我が家の最寄駅から一駅の所で、その近さも私にとっては大きな魅力だったのである。それが、面接場所を見たらなんと、「銀座」。銀座なんて、最後に足を踏み入れたのはいつだったか、思い出せないくらい昔だ。しかも、時間は夕方の5時半・・・・・。
普通、面接というのは午前だったら10時から11時ぐらい、午後であるなら2時から3時ぐらいが一般的だ。5時半なんて時間は、生まれて初めてである。
「5時半からだと、終わるのは早くて6時過ぎ。ヘタしたら帰りは8時近くになるかも」
私の胸によぎる一抹の不安(もうここ何年も通勤ラッシュとは無縁の生活だ)。それ以上に痛いのは、交通費である。「(どんな条件でも)こいつはホイホイ来るだろう」と、何だか足元を見透かされている感が半端ない。それでも面接に向かってしまう、おばさん求職者の悲しさよ。だって、面接にこぎつけるのだけでもごくわずかなんだよ~!!
結局、この手の仕事は派遣が多い。だから、就業場所が地方であっても、面接は本社のある都心、ということがままあるのだ。まったく、どこまで行っても詰めの甘いレックスである。
そんなこんなで、えっちら銀座まで出かけた私の前に差し出されたのは、事細かに書かれた服務規程だった。いわく、靴は黒のプレーンなパンプス、ヒールは3~5センチ、ほほ紅の色はこんな感じで、ぬり方はこう、口紅の色はこれかなぁ~、マスカラもぬってね。すっぴんは厳禁よ、ヘアスタイルの見本はこれ、スカートの色と形はこうね、etc. こんな細かい服務規程を見たのは、高校の生徒手帳以来である。
「コンシェルジュのお仕事は、いわばホテルのフロントと同じです」
面接官のお姉さんが厳かに宣言する。
「身だしなみには、十分気を付けてもらわないといけません」
確かに。しかし、一言いわせてほしい。
「にしては、時給950円はちょっと・・・・・・」
身だしなみを整えるためにはそれなりに金もかかる。美容院にだって頻繁に行く必要があるし、化粧品もそろえる必要がある。服だって買わなきゃいけないし・・・・。第一、ほほ紅なんて、ぬったことないんですけど、私・・・・・。それとも、それってレックスが普段ズボラにしているってだけの話?!
「レックスさんは、少し白髪が目立ちますね。それもきちんと染めてもらいます!」
私は確かにヘアカラーは使っていない。というのも、地肌が弱いので、市販のものではかぶれてしまう恐れがあるためだ。それで、天然成分のカラートリートメントを愛用している。それだと、白髪が単に目立たなくなるだけだが、地肌を痛める心配は少ない。
しかし、しっかり染めないとダメ! ということになると、それでは用が済まなくなる。市販品ではかぶれてしまうレックス、美容院で「地肌に優しい」カラーリングをせねばなるまい。
さあ、ここで皆さん大きな声で。
「時給950円で!?」
とどめはお姉さんの次の一言だった。
「研修はここ(銀座)で行います」
無理!! それ絶対無理ですから! 若い頃には都心まで通ったこともあったが、還暦が近づいた今、銀座まで通ったらそれだけで過労死してしまいそうだ。
結局、丁寧にご辞退申し上げるしかなかった。やはり、仕事の内容もろくろく確かめずに、安易な発想で飛びついたのがいけなかった。そもそもこの私に「ホテルのフロント」は無理な相談だったのだ。やはり、伊達に「コンシェルジュ」とついているわけではない、サービス業をなめていはいけない。
ここで教訓。
「横文字の仕事には気をつけろ!!」
しかし、久々の銀座は遠かったね。
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