帰宅すれば、やれスカイプだ、インターネットだ、DVDだと、わが世の春を謳歌していたアホ娘も、もはや中年の域に達し。玄関を開ければ夕食の香りが鼻孔をくすぐる、という桃源郷が少しずつ崩れ出して行った・・・・・
「ただいま!」
戸を開けると、母はこたつの中から半身を乗り出し、一言、
「お帰り・・・・・」
見ると、時計はゆうに8時を回っていると言うのに、キッチンに火は無く寒々としている。
え!? まだ夕飯の支度、全然やってなかったの!? と切れる中年女一人。
最初のうちはヒステリーを起こしていた私だったが、段々あきらめから悟りに変わり、
「もう、お母さんも年なんだよ。いいかげん、バトンタッチしないとな」
という状況へと向かって行った。
それでもまだ当時は私が帰宅してから二人一緒にキッチンに立ち、夕食を作っていた。また、料理はしないまでも、食後の後片付けは母が引き受けてくれていたのだ。
「いいよ、いいよ、お母さんが片づけるから」
そんな言葉に甘えて、相も変わらずアホ娘はいそいそとDVDだ、インターネットだ、スカイプだと・・・・・。
段々と、掃除・洗濯と私がしなければならない家事が増えて行ったが、それも、
「まあ、仕方ない、年なんだから。私だって、いいかげんパラサイトは卒業しないと。他の結婚している友人たちはずっと前からこうして一家を切り盛りしているわけだしね」
と考えていた。
そう、まだまだ余裕があったし、まさかその後の「地獄(?)の介護生活」は想像だにしていなかったのである。それが・・・・・・。
いい年こくまで平然と親に世話をしてもらっていたバチが当たったのかも、少しそんな気もしているレックスだった。
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